リベ大どうぶつ病院

コラム

老犬・老猫の麻酔は危険?手術リスクを獣医師が解説 

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  • 😺猫

  • 総合診療

公開日

2026.7.8

更新日

2026.7.8

こんにちは!リベ大どうぶつ病院 院長の林です。

シニア期の子の手術を前に、麻酔への不安をご相談いただくことがあります。


🌀 うちの子はもう高齢だけど、麻酔をかけて大丈夫?

🌀 何歳から麻酔は危険になるの?


このような不安をお持ちの飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか。

年齢だけを理由に判断してしまうと、必要な治療の機会を逃してしまうことがあります。


今回は、高齢の犬・猫の麻酔リスクについて、何歳から気をつけるべきか、リスクに備えるための方法を解説します。

手術をするかどうか迷ったときの参考にしてください。

🔸 犬や猫の麻酔・手術リスクは、年齢だけでは決まりません

結論からお伝えすると、年齢だけを理由に手術や麻酔を諦める必要はありません


海外のガイドラインでも、高齢であること自体は全身麻酔を避ける理由にはならないとされています。

シニアの子でも、術前検査で全身状態を確認したうえで、麻酔を検討できることがあります。


ただし「年齢を気にしなくていい」という意味ではありません。

高齢の子ほど、事前に全身状態を評価し、麻酔リスクに備えることが大切です。

🔸 麻酔リスクを考えるうえで大切なのは「年齢」より「全身状態」

犬・猫の麻酔の死亡率は?健康な犬と持病のある犬で約25倍の差

海外の大規模な研究では、麻酔に関連した死亡率は次のように報告されています。

全身状態

健康な子

約1,800頭に1頭

約900頭に1頭

持病などがある子

約75頭に1頭

約70頭に1頭

つまり、リスクを左右するのは「年齢」そのものより、心臓・腎臓・肝臓などを含めた今の全身状態です。


加齢も麻酔リスクを上げる要因のひとつ

一方で、複数の研究で「加齢」は麻酔死亡のリスクを上げる要因のひとつとされています。高齢になると臓器の予備力が下がるためです。


だからこそ、高齢の子では「年齢だから危険」と決めつけるのではなく、状態を丁寧に評価して備えることが大切です。

🔸 「何歳から高齢?」犬・猫のシニアの目安

犬・猫で「高齢」に明確な線引きはない


犬・猫の老化の早さは種類や体格で異なるため、「何歳からが高齢」という明確な線引きはありません

目安としては、犬は小型犬で7歳ごろ、大型犬はそれより早く、猫は10歳前後からシニア期と考えられています(生涯の最後の4分の1ほどがシニア期にあたります)。

10歳を超える犬でも、全身状態が良ければ手術も十分選択肢になる

たとえば10歳の犬でも、検査で心臓や腎臓などの状態を確認したうえで、手術を検討できることがあります。

麻酔を行うかどうかは、処置によって得られるメリットと麻酔リスクを比較して判断します。その見極めには全身状態の評価が欠かせません。

年齢は「諦める理由」ではなく、「より丁寧に評価する合図」と考えてください。

🔸 高齢の犬や猫の麻酔リスクに備えるために|術前・術中・術後の管理ポイント

ここでは、手術の前・最中・後の3段階に分けて、リスクを下げるための管理ポイントを見ていきます。

術前:検査でその子の状態を評価する

術前の血液検査や心臓の検査などで、臓器の働きや隠れた病気がないかを確認します。

その結果をもとに麻酔のリスクをASA分類で評価し、その子に合った麻酔計画を立てます。

※ASA分類:全身状態からリスクを段階的に見る指標


▶︎ 関連記事はこちら「犬・猫の手術前検査|必要な理由・検査内容・費用を獣医師が解説

術中:こまめなモニタリングで変化に早く気づく

麻酔中は心拍・血圧・酸素・体温などを継続して確認し、変化に早く気づいて対応します。研究でも、モニタリングの実施はリスクの低減につながると報告されています。


▶︎ 関連記事はこちら「犬・猫の全身麻酔中、獣医師は何を見ている?手術中の安全管理をやさしく解説

術後:見守りが大切

海外の研究では、麻酔に関連した死亡の約半数は術後に起きると報告されています。

そのため、手術が終わってからの見守りと体調管理に気を配ります。

愛犬と一緒に微笑む院長の写真と『院長のワンポイントアドバイス』という吹き出しのメッセージ

「『この年齢で麻酔は大丈夫?』は頻繁にいただくご相談です。しっかり全身を評価できていれば、高齢というだけで過度に怖がる必要はありません。持病がある場合でも、検査結果や病気の状態をふまえて、麻酔や手術を検討できた症例もあります。」

▶︎ 関連記事はこちら「当院における治療例|心臓病の犬の膀胱結石手術

🔸 「高齢だから様子見」が負担につながることも|手術の先送りリスク

🌀 年だから、無理に手術しない方がいいのかな?


そう考えて必要な処置を先延ばしにすると、かえって体への負担が増えることがあります。


たとえば重度の歯周病や腫瘍は、放置するほど全身への負担が増えることがあります。

その結果、いざ麻酔をする際に、より難しい管理が必要になります。


さらに年齢を重ねるほど、今の病気とは別の持病が新たに見つかることも少なくありません。

複数の持病を抱えてからの麻酔は、より慎重な判断が必要になります。


だからこそ、「不安だから」と怖がるのではなく、「今なら、まだ良い状態で対処できるか」という視点も大切です

リスクをゼロにはできませんが、全身状態を評価して備えれば、過度に怖がる必要はありません。

🔸 老犬・老猫の麻酔に関するよくある質問

Q. 10歳を超えたら手術は避けるべき?

A. 10歳という数字だけが基準になるわけではありません。

同じ10歳でも、心臓や腎臓の状態は子によって異なります。

まずは術前検査で今の状態を確かめ、治療のメリットと見比べて、獣医師と相談して決めていきましょう。

Q. 高齢の歯科処置は受けてもいい?

A. 全身状態によっては、歯科処置を検討できる場合があります。

重度の歯周病は、放置することで体の負担になることもあります。

術前検査で状態を確認し、麻酔リスクと処置の必要性を比べながら判断するので、ぜひ主治医にご相談ください。

🔸 まとめ|年齢だけでなく「状態」を見て判断することが大切です

麻酔リスクには、年齢だけでなく、心臓や腎臓などを含めた今の全身状態が大きく関わります。
リスクをゼロにすることはできません。

でも大切なのは、怖がりすぎず軽く見すぎず、全身状態を確認したうえで治療の選択肢を考えることです。

「高齢だから」と迷ったときこそ、まず今の全身状態を確認し、獣医師と一緒にその子に合った方法を考えていきましょう。


当院でも、年齢だけで判断せず、全身状態を確認しながら手術計画を検討しています。

手術や麻酔について迷われている場合は、セカンドオピニオンとしてのご相談も可能です。

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それではまた、次のコラムで!


【参考文献】

  1. American Animal Hospital Association 2023 AAHA Senior Care Guidelines for Dogs and Cats: Anesthetic and Surgical Considerations

  2. Brodbelt DC, et al. The risk of death: the confidential enquiry into perioperative small animal fatalities. Veterinary Anaesthesia and Analgesia, 2008, 35巻, 5号, p365-373

  3. Brodbelt DC, et al. Risk factors for anaesthetic-related death in cats (CEPSAF). British Journal of Anaesthesia, 2007, 99巻, 5号, p617-623

  4. Matthews NS, et al. Factors associated with anesthetic-related death in dogs and cats in primary care veterinary hospitals. Journal of the American Veterinary Medical Association, 2017, 250巻, 6号, p655-665

  5. Creevy KE, et al. 2019 AAHA Canine Life Stage Guidelines. Journal of the American Animal Hospital Association, 2019, 55巻, 6号, p267-290

  6. 枝村一弥. ロジックで攻める!! 初心者のための小動物の実践外科学. チクサン出版社, 2007

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