リベ大どうぶつ病院

コラム

犬・猫の全身麻酔中、獣医師は何を見ている?手術中の安全管理をやさしく解説 

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  • 😺猫

  • 総合診療

公開日

2026.7.1

更新日

2026.7.1

こんにちは!リベ大どうぶつ病院 院長の林です。

🌀 手術中、うちの子の状態はどのように確認しているの?

🌀 何かあったときに、すぐ対応してもらえるの?


そんな疑問をお持ちの飼い主さんも、多いのではないでしょうか。


今回のコラムでは、全身麻酔中にスタッフが実際に何をしているか、どんな項目を管理しているかを具体的にお伝えします。

このコラムが、手術への不安を少しでも和らげるきっかけになるとうれしいです。

🔸 麻酔の安全管理は、手術前から覚醒後まで続いています

全身麻酔には一定のリスクがあり、麻酔に関連する死亡率は、犬で約0.05%、猫で約0.1%前後と報告されています。

十分に注意していても、そのリスクを完全になくすことはできません

意外かもしれませんが、犬・猫の死亡事故のうち47〜60%は、麻酔から目が覚める時期(覚醒期)に起きており、その多くが術後3時間以内に集中するという報告があります。


だからこそ、手術中だけでなく、覚醒後もスタッフが継続して体の状態を確認することが大切です

🔸 手術中に確認している代表的な5つのサイン

ここでは、術中に確認している5つのサインと、それぞれを確認する理由についてご紹介します。

心拍数・心電図

心臓が正しいリズムで動いているかを確かめています。


麻酔薬は心臓に影響を与えることがあり、心拍数や不整脈が出ていないか確認が必要です

当院では、術中に不整脈が認められた場合、術後の診察時に心電図をお見せしながらご説明し、記録紙をお渡ししています。

血液に含まれる酸素の量(SpO₂:エスピーオーツー)

血液の中に酸素がどのくらいあるかを見る数値で、全身に酸素が届いているかを確かめています。


麻酔中は呼吸が浅くなったり、肺の一部がうまく広がらなかったりするため、血中酸素濃度の測定が必要です。

パルスオキシメーターを、舌や耳、肉球などの皮膚が薄い部分に装着して測定します。

血圧

全身の臓器に十分な血液が届いているかを確かめています。


麻酔中は血管が広がったり、心臓の働きが弱くなったりして血圧が下がることがあります

そのため、血圧の管理は、関わるスタッフ全員が特に意識しているポイントのひとつです。

血圧の低下が続く場合は、輸液(血圧を保つための点滴)や昇圧剤(血圧をあげる薬)の投与などで対応します。

体温

体温が適切に保たれているかを確かめています。


麻酔中は体温が下がりやすい傾向があります。

体温が下がると、麻酔薬が体から抜けるのに時間がかかることがあります

その結果、目覚めるまでに時間がかかったり、術後の体調に影響したりすることがあるため、体温の管理が大切です。

加温装置などを使って体温を維持しながら手術を進めます。

ただし、体温の低下を完全に止めることは難しいため、低下のスピードや体格も見ながら、できるだけ早い段階から温めて体温を保つようにしています。

呼吸の状態(EtCO₂)

呼吸の深さと、息を吐いたときに出る二酸化炭素がきちんと排出されているかを確かめています。


麻酔中は呼吸が浅くなったり弱くなったりすることがあるため、呼吸状態の確認が必要です。

基準から外れる場合は換気量の調整や人工呼吸器の設定変更を行います。

それぞれのサインの数値目安

ここからは少し専門的な、具体的な数字の話になります。

「うちの子の状態を数字でも知っておきたい」という方に向けた内容なので、難しく感じる方は読み飛ばしていただいても大丈夫です。

確認する項目

目安

異常があったときの対応

心拍数

猫:約100回/分以上
小型犬:約70回/分以上
大型犬:約60回/分以上

麻酔薬の量を調整したり、心臓の動きを助けるお薬を使ったりします

血中酸素濃度(SpO₂)

95%以上

酸素を多く送ったり、人工呼吸器で呼吸を補助したりします

血圧(平均動脈圧)

60mmHg以上

輸液(点滴)の量を調整したり、血圧をあげるお薬を使ったりします

体温

36.7℃を下回らない

加温装置などを使って体を温めながら手術を進めます

呼吸(EtCO₂)

40〜50mmHg(最大55mmHg)

人工呼吸器の設定を変えたり、呼吸を補助したりします

ただし、適切な範囲は年齢や体の状態、手術内容によって変わります。

数値だけで判断するのではなく、その子の全身状態を見ながら対応しています。

ご不安な方は担当医にご相談ください。

🔸 いつもと違う変化があったときはどう対応するのか?

手術中は、できるだけ早く変化に気づけるよう、スタッフがモニターの数値を継続して確認しています。

もし数値や状態に変化があった場合は、その原因を確認しながら、麻酔の量の調整、呼吸の補助、必要なお薬の投与などを行います。


さらに、万一に備えて、緊急時に使う薬や器具は手術前から準備しています。

🔸 安全な麻酔は手術前の検査から始まります

麻酔の安全性は、手術が始まった後の状態だけで決まるものではありません。

手術前に行う検査の結果をもとに、その子に合った麻酔の方法を考えていきます。


たとえば、腎臓や肝臓の働きに問題がないか、心臓の状態はどうか、血が止まりにくくないかなどを事前に確認します。

こうした情報は、その子の体の状態に合わせた手術計画を立てたり、麻酔薬の組み合わせや量を判断したりするためにとても大切です。


▶︎ 関連記事はこちら「犬・猫の手術前検査|必要な理由・検査内容・費用を獣医師が解説

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「麻酔中はどんなことをしているんですか?」とご質問をいただくことがあります。

手術中のモニターにはたくさんの数字が表示されますが、その一つひとつに大切な意味があります。スタッフは少しの変化にも気づけるよう、そばで状態を確認しています。

🔸 まとめ|全身麻酔中も体の状態を見守っています

全身麻酔中は、心臓の動きや酸素の状態、血圧、体温、呼吸などを継続して確認しています。

また、数字だけを見るのではなく、呼吸の様子や粘膜の色、その子の反応などもあわせて、体の状態を細かく見守っています。


こうした麻酔中の管理を行っていても、手術に伴うリスクをゼロにすることはできません。

そのため、事前検査や術中の管理を通して、できるだけリスクを減らしていきます。


今日のコラムが、手術を予定されている飼い主のみなさんの不安を、少しでも減らす内容になっているとうれしいです。


もし当院で手術を予定されている方は、手術前に気になることや心配なことは、どんな小さなことでも遠慮なく相談してください。


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それではまた、次のコラムで!


【参考文献】

  1. Grubb T, et al. 2020 AAHA Anesthesia and Monitoring Guidelines for Dogs and Cats. J Am Anim Hosp Assoc, 2020, 56巻

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