🐶犬
泌尿器科
公開日
2026.6.29
更新日
2026.6.26

こんにちは!リベ大どうぶつ病院 院長の林です。
🌀 愛犬の陰茎の先から、赤いものが出てきて戻らない…
🌀 出血しているみたいで、病院に連れていくべきか悩んでいる
突然こんな状況になり、不安になっていませんか?
犬の陰茎から赤いものが出たり出血したりするとき、その原因の一つとして考えられるのが「尿道脱」という病気です。
今回のコラムでは、尿道脱の症状や原因・治療法について、獣医師が解説していきます!
「尿道脱(にょうどうだつ)」とは、尿道の内側の粘膜が外に飛び出してしまう病気です。主にオス犬で見られ、陰茎の先端からドーナツ状の赤い組織が突出するのが特徴的です。
犬の泌尿器疾患のなかでは比較的まれな疾患ですが、特定の条件が重なる犬で発症しやすい傾向があります。
脱出した組織は見た目のインパクトが大きく、飼い主さんが「出血している!」と気づいて来院されることが多い病気です。
実際に出血を伴うことがあるほか、愛犬がその部分をしきりに舐める・気にするといった行動が見られることもあります。排尿のときに違和感を示すコもいます。
【尿道脱の状態】
※ご注意
リンクを開くと、動物の陰茎の写真が表示されます。苦手な方は閲覧をご遠慮ください。
▶︎ 症例写真を見る
軽度の尿道脱は一時的に組織が引っ込むこともありますが、繰り返していると、だんだん戻らなくなるケースが多くあります。
犬の尿道脱は、早めに適切な対応をすることで予後が大きく変わる病気です。「いつの間にか治まっている」と様子を見ていると、悪化してしまうことも珍しくありません。
少しでも気になる症状があれば、早めに近くの動物病院にご相談ください。

尿道脱は、すべてのオス犬に同じように起こるわけではありません。以下のような条件が重なる犬で、発症リスクが高まると考えられています。
✅ 若齢(とくに若いオス)
✅ 未去勢
✅ 興奮しやすい性格
なかでも多く見られるのが、イングリッシュブルドッグ・フレンチブルドッグ・ボストンテリア・ピットブル・エキゾチックブリーなど、いわゆる「鼻ぺちゃ系」と呼ばれる短頭種です。ある研究では、全症例の約80%が短頭種だったという報告もあります。
短頭種に尿道脱が多い理由としては、次のように、いくつかの要因が重なっているためだと考えられています。
🔹 生まれつき尿道が飛び出しやすい構造
🔹 興奮しやすい気質
🔹 いきみやすい・腹圧がかかりやすい身体的な傾向
性的興奮(発情行動)や、排尿・排便時の強いいきみなどによって、尿道の粘膜に繰り返し負荷がかかりやすくなると、尿道脱の引き金になってしまいます。
マウンティングや興奮時のいきみが増えている、排尿・排便のときにふんばる様子が目立つといった変化が見られたときは、陰茎に異常がないか気にかけてあげましょう。

尿道脱の治療は、大きく「内科的治療」と「外科手術」に分けられます。
軽度であれば内科的なアプローチから始めることもありますが、根本的に解決するには外科手術が良いと言われています。
軽度の尿道脱の場合には、次のような内科的アプローチがあるとされています。
抗炎症薬の投与
エリザベスカラーによる舐め防止
安静管理
ただし、内科的治療だけでは症状を抑えきれないことが多く、根本的な改善は難しいのが現状です。一度症状が落ち着いても、繰り返し脱出・出血を起こすケースが少なくありません。
繰り返す場合や脱出の程度が大きい場合は、外科手術を検討することになります。
尿道脱の治療において、外科手術は最も確実な治療法とされています。
当院では、脱出量が少ない場合、粘膜を元の位置に戻す「整復」と「固定」を組み合わせた方法で対応します。
一方、脱出が大きく、粘膜が大きく反転してしまっている場合は、過剰に脱出した粘膜を切除し、丁寧に整復したうえで、特殊な縫い方(マットレス縫合)をして固定する方法をとっています。

そのコの状況に合わせた術式を選び、再発リスクをできるだけ下げられるよう心がけています。
以下は、当院で実際に手術を行った症例です。術後5ヶ月でここまで回復してくれました。
【術後5ヶ月の回復の様子】
※ご注意
リンクを開くと、動物の陰茎の写真が表示されます。苦手な方は閲覧をご遠慮ください。
▶︎ 症例写真を見る
手術後の注意点
尿道脱の手術後は、再発を防止するために次のようなケアが必要です。
✅ エリザベスカラーの装着(舐め防止のため必須)
✅ 興奮・刺激をできるだけ避ける、お散歩も控えめに
術後1週間前後は、軽度の出血が見られることがあります。また、縫合糸の影響で、術後1ヶ月ほど経ってから一時的な出血が見られるケースもありますが、多くは自然に落ち着いていきます。
「術後なのに出血している…」と心配になったときも、遠慮なくご連絡ください。
犬の尿道脱は頻度こそ高くありませんが、早めに適切な対応をすることで悪化や再発リスクを抑えられる可能性がある病気です。予後が大きく変わる病気です。
🌀 陰茎の先から赤いものが出ている・なかなか戻らない
🌀 出血が続いている
🌀 排尿・排便のときにふんばる様子が目立つ
こういった症状が気になるときは、早めにご相談ください。
当院では、尿道脱のような比較的まれな外科疾患も対応しております。「これって大丈夫?」という段階でも構いませんので、気になることがあればお気軽にご連絡ください。
それではまた、次のコラムで!
【参考文献】
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Healy D, et al. Surgical treatment of canine urethral prolapse via urethropexy or resection and anastomosis. J Small Anim Pract. 2024;65(3):195-202.
Grewal MK, Kudej RK, Grace M. Assessment of Combined Resection-Anastomosis and Urethropexy in Dogs with Urethral Prolapse. J Am Anim Hosp Assoc. 2024;60(5):179-187.
Biehl KE, et al. Resection via carbon dioxide laser for the treatment of canine urethral prolapse is associated with a higher rate of complications. Am J Vet Res. 2025.
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