🐶犬
眼科
公開日
更新日

こんにちは!リベ大どうぶつ病院 院長の林です。
🌀 愛犬の目頭に、赤い丸いものが出てきた
🌀 自然に治る?自分で戻せる?
愛犬の目頭に突然ふくらみが現れると、どうしたらよいのか不安に感じる方もいるでしょう。犬の目から赤色やピンク色の丸いものが出ている場合、それは「チェリーアイ」かもしれません。
チェリーアイは、いったん引っ込んでも再び出てくることがあります。ご自宅で無理に押し戻そうとせず、目をこする、目やにが増える、痛がるなどの様子があれば、早めに動物病院で確認してもらいましょう。
今回のコラムでは、犬のチェリーアイの症状や原因、放置するリスク、目薬や手術による治療についてお話ししていきます!

チェリーアイとは、目頭にある瞬膜腺(しゅんまくせん)が本来の位置から飛び出した状態のことです。医学的には「瞬膜腺脱出」と呼ばれます。
犬には上下のまぶたのほかに、目頭側から目を保護する「瞬膜」と呼ばれる第三のまぶたがあります。その内側にあり、涙をつくる組織が瞬膜腺です。
犬がチェリーアイになると、次のような症状がみられます。
✅ 目頭に赤色やピンク色の丸いふくらみがある
✅ 目やにや涙が増える
✅ 目が充血する
✅ 前足で目をこする
✅ まぶしそうに目を細める

ただし、目頭に赤い組織が見えるからといって、すべてがチェリーアイとは限りません。角膜潰瘍(角膜の傷)やぶどう膜炎(目の中の炎症)によって瞬膜が出ている場合や、瞬膜に腫瘍ができている場合もあります。
愛犬の目頭のふくらみが気になったら、動物病院で目の表面や涙の量を調べ、瞬膜腺や瞬膜軟骨の状態を確認してもらうことが大切です。

ふくらみが出たり引っ込んだりする場合は、出ているときの写真を撮っておくと、診察時に目の状態を確認する手がかりになります。
犬のチェリーアイが起こる正確な原因は、まだ完全にはわかっていません。瞬膜腺を支える組織がゆるく、腺を本来の位置に保ちにくいことが一因と考えられます。
また、チェリーアイ発症には、年齢や犬種、遺伝的な素因との関係も指摘されています。英国で診療を受けた約90万頭のデータを調べた研究では、1歳未満の犬や短頭種で、チェリーアイとの強い関連がみられました。
なかでも、次のような犬種では発症しやすい傾向が報告されています。
イングリッシュ・ブルドッグ
フレンチ・ブルドッグ
ラサ・アプソ
アメリカン・コッカー・スパニエル
ただし、これは英国の犬を対象とした観察研究の結果であり、犬種にかかわらずチェリーアイになる可能性はあります。
チェリーアイは一度引っ込むこともあるため、飼い主さんは「様子を見ていれば治るのでは」と考えてしまいがちです。
しかし、再び瞬膜腺が飛び出すケースも少なくありません。脱出した状態が続くと、瞬膜腺が赤く腫れたり、目の表面にこすれて角膜に傷がついたりするおそれがあります。
角膜が傷つくと、痛みで目を細める、涙や目やにが増えるなどの症状が現れることもあります。さらに、涙をつくる瞬膜腺が正常に働きにくくなることで、涙の量や質が低下し、ドライアイにつながる可能性もあります。
ふくらみが消えたとしても、目やに・涙・目を気にする様子がある場合や、繰り返す場合は、動物病院で診察を受けましょう。
チェリーアイの治療方法は、次のような点を確認して獣医師が決定します。
◻︎ 瞬膜腺の赤みや腫れの程度
◻︎ 脱出を繰り返しているか
◻︎ 瞬膜軟骨に変形がないか

チェリーアイの治療では、瞬膜腺の赤みや腫れを抑えるために、目薬を使用します。
ただし、赤みや腫れが落ち着いても、目薬だけで瞬膜腺を本来の位置に固定することは困難です。
目の状態によっては、獣医師が瞬膜腺を手で元の位置へ戻す「用手整復」を行うケースもあります。
💭 「自宅でも整復できるかも?」
そう思われるかもしれませんが、用手整復は、目の表面に麻酔をし、専用の器具を使うこともある専門的な処置です。無理に行うと、飛び出した瞬膜腺が傷つき、出血や腫れが悪化するおそれがあるため、家庭では行わないようにしてください。
瞬膜腺が飛び出したまま戻らない場合や、脱出を繰り返す場合には、手術を検討します。
チェリーアイの手術では、脱出している瞬膜腺を切除せず、本来の位置へ戻して固定します。瞬膜腺を切除した犬では、将来ドライアイになるリスクが報告されているためです。
当院では、瞬膜の内側に小さなポケットをつくり、その中へ瞬膜腺を戻して縫い閉じる「ポケット法」で手術を行っています。T字軟骨と呼ばれる瞬膜軟骨に変形がある場合は、目の状態に応じて軟骨の処置も追加します。
手術は全身麻酔下で行い、局所的な鎮痛と注射による全身的な鎮痛を組み合わせます。
※ 手術の主なリスクは、再発、涙がたまる嚢胞、角膜の傷、感染などです。全身麻酔中には、血圧の低下や呼吸が浅くなるなどの変化が起こることもあります。術後は目の状態を確認し、必要に応じて治療を行います。

術後は目をこすると傷口に負担がかかるため、エリザベスカラーを装着していただきます。
【当院での症例 ①】
コーギー/9歳/女の子(避妊済み)/約12kg

【当院での症例 ②】
チワワとダックスのミックス/1歳/女の子(未避妊)/約5kg

※症例写真は、飼い主さんから掲載許可を得て使用しています。
A. チェリーアイの手術費用は、片眼か両眼か、追加の処置が必要かなどによって異なります。リベ大どうぶつ病院での費用については、診察時にご相談ください。
A. 当院では基本的に日帰りで対応していますが、ご自宅での管理が難しい場合は入院も可能です。術後の再診時期や通院回数は、目の状態に応じてご案内します。
A. 手術後の再発や、反対側の目への発症は、いずれも起こり得ます。
チェリーアイの両眼発症は約36%という報告もあります。片眼に症状がある場合は、反対側の目の様子も注意して観察していきます。
今回は、犬のチェリーアイの症状・原因・治療についてお話ししました。
チェリーアイは、一時的に腫れが引いても、再び瞬膜腺が飛び出すことがあります。その状態が続いたり繰り返したりすると、目の表面に負担がかかり、角膜の傷やドライアイにつながる場合もあります。
目頭に赤いふくらみが見られたら、自力で戻そうとせず、一度動物病院で目の状態を確認してもらうと安心です。
当院では、瞬膜腺を残して本来の位置へ戻す手術に対応しています。愛犬の目に気になる変化があれば、お気軽にご相談ください。
▶︎ 【大阪府あびこ駅徒歩4分】目の症状に関するご予約・ご相談はこちらから
それではまた、次のコラムで!
O’Neill DG, et al. Breed and conformational predispositions for prolapsed nictitating membrane gland (PNMG) in dogs in the UK: A VetCompass study. PLoS One. 2022;17(1):e0260538.
Freyer J, et al. Association of FGF4L1 Retrogene Insertion with Prolapsed Gland of the Nictitans (Cherry Eye) in Dogs. Genes. 2024;15(2):198.
Dugan SJ, et al. Clinical and histologic evaluation of the prolapsed third eyelid gland in dogs. J Am Vet Med Assoc. 1992;201(12):1861-1867.
Saito A, et al. The effect of third eyelid gland removal on the ocular surface of dogs. Vet Ophthalmol. 2001;4(1):13-18.
White C, Brennan ML. An Evidence-Based Rapid Review of Surgical Techniques for Correction of Prolapsed Nictitans Glands in Dogs. Vet Sci. 2018;5(3):75.
White CN, et al. Variation in the Reported Management of Canine Prolapsed Nictitans Gland and Feline Herpetic Keratitis. Vet Sci. 2018;5(2):54.
Mazzucchelli S, et al. Retrospective study of 155 cases of prolapse of the nictitating membrane gland in dogs. Vet Rec. 2012;170(17):443.
Michel J, et al. Treatment of prolapsed gland and cartilage deformity of the nictitating membrane with pocket technique and chondrectomy alone, or combined with a wedge conjunctivectomy: 132 dogs (1998-2018). Vet Ophthalmol. 2020;23(2):305-313.
American Animal Hospital Association. 2020 AAHA Anesthesia and Monitoring Guidelines for Dogs and Cats. J Am Anim Hosp Assoc. 2020;56(2):59-82.
眼科に関するコラム
関連記事はまだありません
一覧へ